実習生を介護職で受け入れるために知っておくべき最低限のこと

以前の記事で紹介したように、これから様々な職種で人手不足が起こると予想されています。

これだけは知っておきたい人手不足の原因と対策

その職種の一つとして挙げられる介護職に関して、平成29年の技能実習法の改正に合わせて外国人技能実習制度の対象職種に追加されました。

今回は介護職として技能実習生を受け入れるために知っておいた方が良いことを詳しく説明していきます。

しゃちょーしゃちょー

うちのお袋の行ってるデイサービスでも職員が足りないってウワサになってるみたいだ

じんじじんじ

介護職員が不足しているのは日本中の課題ですからね

しゃちょーしゃちょー

これから少子高齢化が進むから今まで以上に深刻な問題かもしれんな・・・

じんじじんじ

しゃちょー、今日はいつになく真剣な表情ですね

しゃちょーしゃちょー

バカモン!
ワシが年寄りになったときに面倒をみる人がいなくなったらワシが困るだろ!!
介護士不足の問題は今のうちになんとかしないといけないんだよっ!

じんじじんじ

そ、そうですよね
(よかった、いつものしゃちょーだ)

介護職種が対象職種に追加

平成29年11月1日に施行された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」にあわせて、外国人技能実習制度の対象職種に介護職種が追加されました。

ただし、介護職種の技能実習においては、他の技能実習とは異なる介護サービスの特性に対応するため、次の3つの要件に対応できるように要件が定められています。

「外国人が担う単純な仕事」というイメージにならないようにすること。

・日本人と同様に適切な処遇を確保し、労働者の処遇・労働環境の改善の努力が損なわれないようにすること。

・介護のサービスの質を担保するとともに、利用者の不安を招かないようにすること。

このため介護職種の実習受け入れに関しては、他の職種での受け入れとは異なる要件がいくつか見受けられます。

介護職で受け入れるための受け入れ側の介護事業所の要件

介護事業所が介護職の技能実習生を受け入れるためには主に以下の要件を満たす必要があります。

介護事業所の条件

まず、技能実習生を受け入れる介護事業所として、下記の要件が必要となります。

・介護福祉士国家試験の受験資格要件において介護の実務経験として認めるサービスを提供している、訪問系サービス以外の事業所であること。

・開設後3年以上経過していること。

・技能実習生が業務を行う際には技能実習生以外の指導員及びその他の介護職員を適切に配置し、利用者の安全の確保等のために必要な措置を講じていること。

実習生の指導にあたる人員の配置

実習生を指導する人員の配置に関しても、以下の要件を満たす必要があります。

技能実習責任者の配置

・事業所ごとに、技能実習責任者講習を修了している者を技能実習責任者として選任及び配置しなければなりません。

・技能実習責任者は技能実習に関与する職員の監督や、技能実習の進捗状況などを管理します。

技能実習指導員の配置

・実習生5人につき1人以上の技能実習指導員を配置しなければなりません。

・技能実習指導員のうち1名以上は看護師、あるいは職務経験5年以上の介護福祉士を指導員として配置する必要があります。

生活指導員の配置

・実習実施者又はその常勤の役員もしくは職員のうち、技能実習を行わせる事業所に所属する者を生活指導員として配置しなければなりません。

・生活指導員には生活における指導だけではなく、技能実習生の生活状況を把握し相談に乗るなどして問題の発生を未然に防止することが求められます。

雇用条件および社会保険・労働保険

技能実習生は日本人労働者と同様の権利を有しています。

そのため、労働基準法の遵守をしなくてはなりません。

賃金に関しても地域ごとの最低賃金を下回らないように雇用契約を結ぶ必要があります。

また、社会保険、年金、雇用保険等の加入が義務付けられています。

技能実習生の宿舎

実習生を受け入れる企業は、実習生に対し生活のための宿舎を確保する必要があります。

初期費用は受け入れ企業が負担し、家賃や光熱費などは実習生が実費負担します。

最低限の生活環境を提供する目安として、実習生1人あたり3畳以上の居住空間を確保し、浴室・洗面所・トイレが付帯している必要があります。

また、生活に必要な冷蔵庫や洗濯機、調理器具や食器などの備品も必要となります。

技能実習生の受け入れ人数枠

介護職種の技能実習生の人数枠は、事業所ごとの常勤介護職員の総数によって決まります。

また、優良な実習実施者として認定されることで人数枠が増加します。

団体監理型の場合の具体的な人数枠は下記の通りです。

事業所ごとの
常勤介護職員の総数
一般の実習実施者 優良な実習実施者
1号 全体
(1・2号)
1号 全体
(1・2・3号)
1人 1人 1人 1人 1人
2人 1人 2人 2人 2人
3~10人 1人 3人 2人 3~10人
11~20人 2人 6人 4人 11~20人
21~30人 3人 9人 6人 21~30人
31~40人 4人 12人 8人 31~40人
41~50人 5人 15人 10人 41~50人
51~71人 6人 18人 12人 51~71人
72~100人 6人 18人 12人 72人
101~119人 10人 30人 20人 101~119人
120~200人 10人 30人 20人 120人
201~300人 15人 45人 30人 180人
301人~ 常勤介護職員の
20分の1
常勤介護職員の
20分の3
常勤介護職員の
10分の1
常勤介護職員の
5分の3
じんじじんじ

介護職での実習生の受入れで、訪問介護はNGですよ

しゃちょーしゃちょー

なんでだ?
ヘルパーとかも立派な介護職だぞ

じんじじんじ

それはそうですけど
訪問だと一人で作業することになるので実習生の研修、つまり勉強にならないということになるんです

しゃちょーしゃちょー

たしか技能実習制度は技能を習得して自国で活かすことが目的だから、単純作業や勉強にならないことはできないんだったな

じんじじんじ

はい
だから実習生がちゃんと勉強できる環境を用意する必要もあるので、デイサービスや老人ホームではその準備が他の業種よりも難しいと言われていますね

じんじじんじ

最近では介護士よりも介護技術を教える先生が不足している方が深刻だって言われているみたいですよ

介護職での入国後講習の内容と時間

技能実習生は、入国後に入国後講習として、一定期間の講習を行う必要があります。

入国後講習についてはこちらの記事でも説明しています。

監理団体って何をする団体なの?

ただし、介護職種の場合、「日本語」「円滑な技能等の修得等に資する知識」の2つの科目について別途内容が定められています。

日本語

介護職種の入国後講習における日本語科目では、講義の総時間が240時間以上である必要があります。

日本語科目の入国後講習の内容と必要な時間は、以下のように定められています。

教育内容 時間数
総合日本語 100 (90)
聴解 20 (18)
読解 13 (11)
文字 27 (24)
発音 7 (6)
会話 27 (24)
作文 6 (5)
介護の日本語 40 (36)
合計 240

※時間数の()内は最低時間となり、左の数字を基準に必要な総時間を満たすカリキュラムが組まれます。

介護職種での技能実習では、指導員や介護施設利用者とのコミュニケーションを図る能力の担保として、日本語能力試験のN4相当以上の取得が前提となっています。

円滑な技能等の修得等に資する知識

介護職種の「円滑な技能等の修得等に資する知識」における講習では、介護に関する基礎的な事項を学ぶ課程を設ける必要があります。

これを「介護導入講習」と呼び、合計で42時間以上の講習が必要と定められています。

内容と必要な時間は以下のように定められています。

教育内容 時間数
介護の基本Ⅰ・Ⅱ 6
コミュニケーション技術 6
移動の介護 6
食事の介護 6
排泄の介護 6
衣服の着脱の介護 6
入浴・身体の清潔の介護 6
合計 42
しゃちょーしゃちょー

先生が足りないっていうのはこういうところで問題が出てくるのか

じんじじんじ

そうなんです
介護職は他の職種よりもかな~り多く勉強する必要があるので、教えるための先生もたくさん必要なんです

しゃちょーしゃちょー

それにしても、日本語以外にも介護技術も講習を受けなきゃいけないんだな

じんじじんじ

人の命を預かる大事なお仕事ですからね!

介護職で受け入れる際の課題

介護職種での技能実習生の受け入れは、日本語能力の要件(N4相当以上)があるため、他職種以上に受入れ難易度が高くなっています。

他職種での技能実習生の受け入れであれば、一般的に約6~7か月ほどで受け入れが可能です。

ただし介護職の場合、日本語能力試験N4相当を取得しなければならないため、試験の期間を加えて12か月以上かかる場合もあります。

受入れする企業と同様に、技能実習生も開始までに待機期間が長期化してしまうことは望んていません。

お互いにとって負担とならないためにも、しっかりと準備をして長期の待機期間となってしまわぬよう注意が必要です。

日本で技能実習を行いたい外国人労働者は多く、事前にN4相当の日本語能力試験に合格している人材も数多くいます。

そのような人材とスムーズにマッチングを行い複雑な要件等を確実にクリアするためにも、技能実習生の受け入れを検討する際は、実績のある専門の機関に相談するのが正しい選択となります。