これから人手不足が起こると予想される業界の1つに、建設・土木業界が挙げられています。
そのため、日本政府は建設・土木業の技能実習生を技能実習終了後に一定の基準を満たすことで、在留期間を定めず国内で働き続けることが出来るよう制度改正を進めています。
つまり、建設・土木業は外国からの技能実習生の受け入れにより、将来的な人手不足を解決できる可能性が出てきたのです。
しゃちょー、周りの会社も技能実習生を入れていますし
そろそろうちも実習生を入れましょうよ
我が社のような建設業でも入れられるのか?
モチロンです
ただ、建設業は注意しなくちゃいけないことも多いのでルールには気を付けなければいけませんね
もったいぶらずに何を気にするのか早く言うんだ!
建設・土木業分野での対象職種の追加
2019年度より、建設・土木業の職種のうち11職種が外国人技能実習制度の対象職種として受け入れを開始されています。
建設・土木業分野での技能実習生の受け入れは以前から行われていましたが、将来的な日本国内での人材不足を見据え、外国人人材のキャリアパスを含めた様々な制度の改正が行われています。
建築業で対象となる職種一覧
2019年度より受け入れが開始されている11職種と、2020年度より受け入れを予定されている20職種、現在受け入れを検討中の7職種をそれぞれ表にまとめてみました。
技能 | 受入開始年度 | ||||
型枠施工、左官、コンクリート圧送、トンネル推進工、 建設機械施工、土工、屋根ふき、電気通信、鉄筋施工、 鉄筋継手、内装仕上<11職種> |
2019年度 | ||||
外壁仕上、PC、基礎工、ウェルポイント施工、 標識・路面標示、のり面工、 建築板金、電気工事、 送電架線施工、溶接、ダクト、鉄骨、 海洋土木工、 建設塗装、防水、保温保冷、ウレタン断熱、造園、 さく井、 シャッター・ドア施工 <20職種> |
2020年度(予定) | ||||
建築大工、とび、運動施設、切断穿孔、冷凍空調、 タイル張り、ガラス施工 <7職種> |
検討中 |
建設・土木業で受け入れるための条件(要件)
職種が多いから難しい?
技能実習生は法令により、行える作業や使用する材料、機器まで細かく規定されており、規定以外を行うことができません。
ですが、建設・土木業はほかの業種と比べ職種が多く、完全に法令による規定通りに出来ないというが現状です。
東日本大震災後には、外国人技能実習生に福島県内の土木工事作業として除染作業を行わせていた、という問題もありました。
土木作業と同時に被爆対策なども必要となる作業で、最終的には厚生労働省が技能実習生の除染土木作業は不可という回答を行っています。
建設・土木業で受け入れるための条件(要件)
このような問題もあり、法令改正により建設・土木業での技能実習生を受け入れるための要件は他の職種と比べても厳しく定められています。
下記に建設・土木業特有の受け入れ要件を簡単にまとめました。
・建設業法(昭和24年法律第100号)第3条の許可を受けていること。
・過去5年間に建設業法、労働基準法にに基づく処分を受けていないこと。
・労働関係法令及び社会保険関係法令を遵守していること。
・建設キャリアアップシステムに登録していること。
・外国人建設就労者を建設キャリアアップシステムに登録すること。
・過去5年間に外国人の受入れ又は就労に係る不正行為を行ったことがないこと。
・報酬予定額が同等の技能を有する日本人が従事する場合の報酬と同等額以上であり、安定的な支払い及び技能習熟に応じた昇給が雇用契約に明記されて いること。
・外国人建設就労者がその者の建設特定活動に関連して、送出し機関、特定監理団体又は受入建設企業となろうとする者から保証金を徴収されないこと及び労働契約の不履行に係る違約金を定める契約等が締結されないこと。
詳しくは国土交通省の「外国人建設就労者受入事業に関する告示」をご覧下さい。
⇒国土交通省「外国人建設就労者受入事業に関する告示」(PDF)
細かく要件がありますが、基本的には「法令の遵守」「技能実習生のキャリアアップ」「不当な条件での契約を結ばない」の3点が強調されています。
ただし、届出の内容などは非常に複雑になっているので、受け入れを考える場合は、この3点を念頭に置きつつ、専門機関へ相談するのが良いでしょう。
建設・土木業では他の職種以上にクリーンに研修をする必要があるんです
ガハハハハ
心配するな、じんじよ
我が社以上にホワイトな環境はないからな~♪
(しゃちょーは私がどれだけサビ残してるか知ってるのかな?)
とにかく、
ちゃんと法律を守る。実習生のキャリアアップの計画の策定と実行。労働契約をしっかり守る。
最低限この3つはちゃんとしなくちゃいけません!
なんで建設・土木業だけがこんな厳しいんだ?
いじめか?
いじめとかじゃないですよ~
建設・土木業では制度運用のルールが守られていないケースが多いんです
だから法令順守をさせるためにこれだけ厳しい条件なんですよ
建設業における失踪問題と対策
技能実習生の受け入れにおいて、近年問題視されているのが失踪問題です。
建設・土木業の技能実習生の人数は技能実習生全体の17%ほどですが、技能実習生の失踪者全体の1/3を占めているといった調査結果が国会で取り上げられ注目を集めました。
大量の失踪が起きてしまう背景には、次のような建設・土木業特有の問題が関わっています。
失踪が起きてしまう背景
建設・土木業の現場では大企業から中小企業へいくつも請け負いが連なる事も珍しくなく、下流の請負へ行くほど賃金は安くなります。
また、悪天候で働けない場合などは賃金が発生しない会社などもあり、当初の雇用契約で示された賃金に満たない場合もあります。
悪天候で稼働できない時間も踏まえて納期内で仕事を終えなければならないため、納期前は休みもなく長時間働かなければならない場合も少なくありません。
建設・土木業は仕事の中での危険も多く、一歩間違えれば周囲を巻き込んだ大事故にも繋がるため、指導も厳しい言葉になりがちです。
また、昔ながらの「職人」の多い業種でもあるため、乱暴な言葉や手が出ることもあります。
ですが、外国では宗教などの理由により、人前で怒ったり叩かれたりすることに大きなショックを受ける人も少なくありません。
失踪問題の対策
これらの問題への対策として国土交通省は、「外国人建設就労者受入事業に関する告示」で要件を定めました。
賃金や労働時間の問題に関しては、日本人労働者と同等の賃金と悪天候などによる賃金カットの禁止などを定め、労働条件の改善を受け入れ企業に求めています。
指導に関しては実習生と指導者や社員、それぞれの理解も必要なことではありますが、技能実習生が実習を終了し、その企業で継続的に働くことになれば理解ある指導者として、問題は好循環で改善されていくでしょう。
土木・建設業はルールを守らない会社が多いから失踪が増えているってことか~
そうですよ!
日本人では指示を出したら言われた通り従うこともあるかもしれませんが、
外国人には理不尽な指示が通用しません
けしからん!
それはやる気がないんじゃないのか!?
やる気ではなく考え方の違いです
国が違えば文化も違いますからね
そういうもんなのか
それにしても失踪は困るな
一度実習生が失踪してしまったら
次の実習生も呼べなくなってしまうんですよ
まとめ
もちろん、上に挙げた問題が全てではありません。
ですが、制度の改正により、これまで課題とされていた問題点は確実に改善されています。
当然、制度の改正が進むことで技能実習生を受け入れる企業が理解しなければならないこと、対応しなければならないことは多くなっていきます。
それらをいち早く解決していくことが、これから遠くない将来に訪れる人手不足を解決する最善の方法ではないでしょうか。
技能実習生を受け入れる事で人材不足の解消を考えているのであれば、ぜひ一度、専門機関での相談をお勧めします。