繊維・衣服関係で技能実習生を入れるときの手順と課題

技能実習生に頼らなければ成り立たない繊維・衣服産業の現状

繊維・衣服産業は、慢性的に人手不足に悩まされている現状です。

製造業全般に言えることですが、技術力の高い社員が高齢となり退職していくなかで若い労働者の確保が難しくなっているのです。

そのため、繊維・衣服産業では以前よりも技能実習制度が活用されてきました。

繊維・衣服維産業での能実習生の受け入れにおいては、約6千の受け入れ企業(実習実施者)が約3万人の技能実習生を受け入れています。

これは技能実習生の受け入れを行っている全産業の中で、4番目に多い数字となります。

安くて質の良い現代日本の繊維・衣服維産業は、技能実習生によって成り立っていると言っても過言ではないのです。

しかし、受け入れる人数が多くなれば様々な問題も生まれやすくなります。

日本の繊維・衣服産業の未来のために、企業と技能実習生の関係はどうあるべきなのか。

この記事では、繊維・衣服産業で技能実習生を受け入れるための条件や注意点について詳しく説明していきます。

しゃちょーしゃちょー

繊維・衣服業で外国人が大勢働いているっていっても、どうもピンとこないんだよな

じんじじんじ

確かに


じんじじんじ

たくさんの外国人が繊維業界やアパレルで働いているといってもそれは工場内ですからね

しゃちょーしゃちょー

コンビニ店員みたいに日ごろから見かけるわけじゃないから
そりゃわからんわけだな

じんじじんじ

そうですよ~
もしかしたらしゃちょーの着ているスーツも実習生が作ったものかもしれませんね♪

繊維・衣服関係が対象職種に追加

少子高齢化や非正規雇用が進むなか、さまざまな業種や職種で人手不足が問題となっています。

そういった各業界の声を受け、国は技能実習制度の改正によって、受け入れ対象の業界や対象職種を増加させている傾向にあります。

繊維・衣服産業においてもそれは例外ではありません。

人手不足の原因や対策についてはこちらで詳しく説明しています。

⇒これだけは知っておきたい人手不足の原因と対策

受け入れ可能な繊維・衣服関係

繊維・衣服産業において、2020年3月時点での受け入れ可能な対象職種は次の13職種22作業となっていいます。

職種名 作業名
紡績運転 ※
(技能実習2号移行対象職種)
前紡工程作業
精紡工程作業
巻糸工程作業
合撚糸工程作業
織布運転 ※
(技能実習2号移行対象職種)
準備工程作業
製織工程作業
仕上工程作業
染 色 糸浸染作業
織物・ニット浸染作業
ニット製品製造 丸編みニット製造作業
靴下製造作業
たて編ニット生地製造 ※ たて編ニット生地製造作業
婦人子供服製造 婦人子供既製服縫製作業
紳士服製造 紳士既製服製造作業
下着類製造 * 下着類製造作業
寝具製作 寝具製作作業
カーペット製造 ※
(技能実習2号移行対象職種)
織じゅうたん製造作業
タフテッドカーペット製造作業
ニードルパンチカーペット製造作業
帆布製品製造 帆布製品製造作業
布はく縫製 ワイシャツ製造作業
座席シート縫製 ※ 自動車シート縫製作業

※の職種は技能実習評価試験職種

繊維・衣服関係で技能実習生を受け入れるための条件

繊維・衣服関係で技能実習生の受け入れを検討する会社は、大手アパレルメーカーの下請けなど、いわゆる中小企業が多い傾向にあります。

そのため、受け入れを検討する際に「この会社の規模で技能実習生を受け入れることが出来るのだろうか」と悩む経営者も多くいます。

とは言え、技能実習生を受け入れている企業の多くは中小企業であり、結論から言えば小規模の会社であっても技能実習生の受け入れは可能です。

受け入れ企業の常勤職員数によって技能実習生の受け入れ人数に上限が設けられていますが、常勤職員数が2名以上の会社であれば受け入れが可能となっています。

しゃちょーしゃちょー

このスーツは数人の職人だけでやってる老舗店に作らせたものだぞ
そんなところじゃ流石に実習生が作ってないだろ

じんじじんじ

いえいえ
たとえ小さな老舗店だって実習生は働けます


じんじじんじ

繊維やアパレルというと大きな工場をイメージしがちですけど零細企業でも立派な繊維・衣服業ですからね

しゃちょーしゃちょー

なにっ

じんじじんじ

それに昔からあるお店の方が職人の高齢化や人手不足に悩んでいるケースが多いみたいですよ

繊維・衣服関係での技能実習生受け入れの流れ

技能実習生の受け入れで企業側の大まかな流れとしては、技能実習生を受け入れてから、あらかじめ作成し監督省庁に提出してある実習計画に沿って実習を行うことになります。

実習期間に関しては職種により異なりますが、技能実習1号から技能実習2号、3号へそれぞれの基準を満たすことで移行し、最長5年間の実習が可能となります。

受け入れを行う準備として、希望する人材の選定や必要な書類の作成と提出、法令によって定められている講習の実施など様々な手続きを行う必要があります。

これら全てを技能実習生の受け入れを検討している中小企業行うことは難しいので、監理団体など外部の専門機関へ委託することが一般的です。

技能実習生の受け入れの流れや受け入れ可能人数、監理団体など、技能実習制度に関する説明はこちらの記事にて説明しております。

受け入れ方法や団体監理型など、技能実習制度に関する説明はこちらの記事をご覧ください。

⇒外国人技能実習生をどこよりもわかりやすく徹底解説!

繊維・衣服関係における不正が多発

技能実習生の受け入れ人数が多い繊維・衣服業界ですが、同時に、不正行為(法令違反等)が多い業種として挙げられる業界でもあります。

不正行為の半分が繊維・衣服分野

不正行為(法令違反等)の状況として、法務省入国管理局が平成29年に技能実習制度の不正行為を指摘した183社の受け入れ企業のうち、繊維・衣服産業が94社と半数以上を占めています。

不正行為の内容としては、最低賃金や割増賃金の不払い、違法な時間外労働、偽変造文書等の行使・提供、名義貸しなどが挙げられました。

繊維・衣服業界では、これらの不正行為により技能実習生の受入停止となった監理団体もあるので注意が必要です。

叫ばれる法令順守の徹底

これらの不正行為が生じる原因として、不正を行う受け入れ企業の法令順守の意識に問題があることは当然ですが、同時に、安価な工賃で縫製などの作業をを受注しなければならないという繊維・衣服産業における根本的な問題も大きな要因となっています。

縫製・衣服産業の下請けでは、複数の企業を挟むことで、適正な工賃が分からないまま安価な工賃で作業を請け負うことも少なくありません。

その結果として、下請けを行う企業の収入が労働者に対して適正な賃金や労働環境等を確保出来ない水準となっていることも、この問題の原因として指摘されています。

こういった問題が放置されれば、技能実習生の受け入れ継続が困難になるのはもちろん、一般の正社員が労働を続けることも難しくなります。

このため、繊維・衣服産業では、管轄省庁や業界の主要団体をはじめとした大手サプライチェーンなどが、技能実習における不正行為の防止や、最低賃金などの法令順守の徹底のために様々な取り組みを始めています。

これに関しては、発注する大手企業だけでなく、技能実習生を受け入れ作業を受注する中小企業も積極的に係わり、繊維・衣服産業全体で改善を進めていく必要があります。

しゃちょーしゃちょー

この業界では調査対象の半分が違反とされているのかっ!?
けしからんっ!!

じんじじんじ

そうですよ、しゃちょー
法令違反は絶対にいけません!

しゃちょーしゃちょー

違反している会社は一度我が社に見学に来るべきだな

じんじじんじ

しゃちょーしゃちょー

我が社の従業員がどれだけ幸せな顔で働いているのか見たら目も覚めるだろう

じんじじんじ

(日夜ブラック環境で働かされて顔面蒼白なんだけど・・・・)

じんじじんじ

しゃちょー、先ほどのホワイト企業宣言の通り今日はもう帰りましょうか、夜も遅いですし

しゃちょーしゃちょー

そうだな、ワシはこれから飲みに行ってくるから後は頼むぞ
終電までには帰れよ~♪

じんじじんじ

(このしゃちょー、自分は違反ギリギリの自覚が全然ないな。。。)

まとめ

縫製・衣服産業における人材不足は深刻で、これを補うには技能実習生の受け入れが不可欠です。

しかし、制度継続のためには業界全体での法令順守の徹底と、受け入れ企業の技能実習制度のルールの熟知が不可欠です。

ですが同時に、様々な法令の絡む技能実習制度の完璧な把握は専門家でなければ難しいといった現実もあります。

技能実習生を受け入れることで人材不足の解消を考えているのであれば、まず一度、専門機関での相談をお勧めします。