外国人技能実習制度が一般に知られるようになってから数年が経ちました。
これまで外国人労働者に関心が薄かった人でも、今では多くの方が様々な制度を利用して外国人が日本で働く現状を知っています。
それに伴い、メディアも外国人技能実習制度や実習生についてを取り上げる頻度も増加しています。
技能実習生を実際に受け入れている企業で勤めている人だと「このニュースはこういうことなんだな」とすぐに理解できるかもしれませんが、一般の方には普段から接していない分、理解が難しい内容もあるかもしれません。
今回は技能実習生に関わるニュースはどのようなものなのか、そしてどうして報道されているのかわかりやすく解説します。
技能実習生が事件を起こしたっていうニュースを良く見るようになったよな
確かにそうですね
日本人だったらメディアでは取り上げられないようなトラブルでも外国人ってだけで報道されてしまいますからね
実際には実習生はそんなに事件を起こしてないってことか?
テレビで外国人が事件を起こしたってやってると、
なんとなく外国人は危ないってイメージをもってしまいますけど
メディアの偏向報道であることがほとんどだと思いますよ
技能実習生の逮捕・事件
残念ながら技能実習生に関わるニュースで最も報道されているのが、実習生による事件についてです。
実習生同士で刃物で刺し合ったや実習生が雇い主にケガをさせてしまったというショッキングな内容でテレビや新聞で目にしたことがある人も多いかと思います。
少し古いデータですが、警視庁の2014年の調査では、技能実習生の摘発は平成24年は331人、平成25年は634人、平成26は1,540人と年々増加していると発表しています。
すべてが殺人や強盗などの凶悪犯罪というわけではないにしても、実際に増加していることは確かな様です。
ただし、メディアが取り上げる事件というのは、「外国人技能実習生が珍しいから」という理由で日本人よりも大きな枠を使って報道していることを忘れてはなりません。
普通の日本生まれ日本育ちの人が小さな事件をテレビや新聞で取り上げても、視聴率や購買率を上げることは難しいので、消費者が興味を引くようなキャッチーなネタを探しているときに事件を起こしたのが技能実習生だったから取り上げたというのが本当の理由ではないでしょうか。
ここでお伝えしたいのは、日本人と比較して外国人技能実習生が起こした事件の方が大きく取り上げられるのは事実ですが、両者を比較したときに実習生の方が事件発生率が異常に高いということはないということです。
経営者による搾取
実習生による事件は先に紹介した通りですが、受け入れる会社側が原因で起きた事件の報道もよくされています。
その中で代表的なものが、実習生を低賃金で長時間労働させるというまるで実習生を奴隷のように扱っているという内容です。
こういったことは先ほどと同じように、外国人技能実習生だから大きく報道されているという面も無きにしも非ずですが、だからこそ搾取されている実習生を救うことに世間の注目が集まっていることは良い傾向と捉えて良いでしょう。
もちろん日本人でも低賃金で長時間労働を強いることは絶対にいけないことです。
ただ、日本ではそれが文化的理由もしくは時代的理由からなのか暗黙の了解で許されてきた背景があるので、日本人の搾取については実習生ほど大きくは報道されなくなってしまいました。
技能実習生に不利な条件で労働を強いていることが明るみに出れば、その会社はペナルティを与えられ、新たな実習生を受け入れることが困難になります。
それを知ったうえで不当な扱いをしている悪質な会社も多いことは事実ですが、年々取り締まりも強化されているので、今後はそういったいわゆるブラック企業は淘汰されていくことが予想されます。
社員によるいじめ
これもブラック企業絡みの話なのですが、経営者の搾取に加えてそこで働く日本人社員によるいじめ問題も深刻です。
実習生は母国で日本語を半年ほど勉強し、さらに日本でも一か月間入国後講習を受けて仕事を始めることになりますが、それでも完璧に日本語をマスターしている状態とは程遠いレベルで仕事をすることになります。
日本人が小学生~大学生まで英語を勉強して話せる英語レベルより言語レベルは高いことが多いですが、それでも最低限の日常会話を話せるくらいです。
そうなると、現場のスタッフは「どうして私たちの言ってることを理解してくれないのか」「みんなが気を付けて保っている和を乱して平気でいられるのかわからない」とストレスを溜め込んでしまう傾向が強いといいます。
この積み重ねにより、少しずつ嫌がらせやいじめに発展してしまうのです。
実習生を受け入れる企業は、まず現場のスタッフに実習生は日本語と文化を勉強中だということを強く教育する必要があります。そして、チーム一丸となって実習生を一人前の社員に育てていくということを共通認識化させることを日ごろから行う必要があります。
こういった取り組みをせず、年長者一人に教育を任せてしまうからこそ、実習生いじめという不幸を招いてしまうことを私たちは肝に銘じておかなくてはいけません。
海外メディアによる技能実習制度への批判
実習生の起こす事件やブラック企業を批判する報道と比較するとそれほど頻繁なわけではありませんが、定期的に見かけるのが海外メディアによる技能実習制度を批判する報道です。
主にヨーロッパなどの先進国メディアが積極的に取り扱うことが多い印象です。
日本の外国人技能実習制度は現代の奴隷制度だ、と日本が途上国労働者を扱う姿勢を強く批判しています。
特に、イギリスBBCは「日本の技能実習生は虐待を受けている」「日本への尊敬を失った」「21世紀に、日本のような豊かな国でこんなことが起きているなんてとても悲しい」とかなり強く批判しています。
こういった海外メディアの主張は、技能実習制度の悪い点を的確に指摘しているのである意味正しいと言えます。
世界からの指摘により、日本政府も制度を実習生にとってより良い制度に変えていく必要に迫られるからです。
しかし反面、完全に制度が悪。日本企業は悪。という表現には納得できません。
なぜなら、技能実習生は外貨獲得や特殊技能の習得、日本での生活といったメリットも同時に享受しているからです。
日本の都合で一方的に奴隷のように働かせていれば問題ですが、お互いがwin-winの関係だからこそ、実習生は進んで企業で研修することを選んでいるはずです。
それを技能実習制度は悪だから廃止しようという動きになれば、日本企業だけでなく、実習生にとっても困ってしまう結果になるでしょう。
コロナの影響で来日できない
新型コロナウイルスの影響で来日できないという問題も最近では取り上げられるようになってきました。
こちらは前回の記事をご覧ください。
実習生もいろいろ大変だなぁ
そうですよね
ただでさえ日本では肩身が狭いのに
でもやっぱり、
テレビが外国人が事件を起こしたとなるとワシらは信じてしまうぞ
う~ん、そこは難しい問題ですけど
一人ひとりが情報を取捨選択して何が正しいことで何が偏向報道なのか判断するしかないかもしれませんね・・・
まとめ
外国人技能実習生についての報道は主に5つのトピックに分けられます。
・技能実習生の逮捕・事件
・低賃金長時間労働を強いるという経営者の搾取
・社員によるいじめ
・海外メディアによる技能実習制度への批判
・コロナの影響で来日できない
どの報道についても言えることは、ネガティブな内容ばかりということです。
メディアは消費者の関心を集めることが仕事です。
そのため、どうしても技能実習生が企業に貢献している。母国で技能を活かしている。といったポジティブなものよりも、人の目を引きやすいネガティブなトピックを扱うことが多くなります。
私たちに求められることは、情報を正しく取得することです。
報道が実習生に対して悲観的なものばかりを扱っていても、ネットや監理団体、セミナーなどを利用して中立的な目線で情報について考えることはできます。
一方的に情報を取得するだけでなく、主体的に幅広く情報を集め、自分の頭で考えることが唯一の正解を導く方法だと考えます。