これだけは知っておきたい人手不足の原因と対策

現在、日本では少子高齢化や人口減少、非正規雇用の 増加などによって、多くの業界が人手不足に陥っています。

人手不足は企業や経営者にとって大きな課題であり、解決しなければならない問題の一つです。

人手不足が発生すれば事業や業務が回らなくなり、会社の倒産につながってしまう可能性が考えられるためです。

そもそもなぜ人手不足は起きてしまうのか。その原因を明確化しなければ対策を立てることができません。

今回は、人手不足の現状を読み解き、原因や対策、人手不足が発生しやすい業界などについてお伝えしていきます。

また、その原因に対し、経営者が取るべき対策について提案したいと思います。

しゃちょーしゃちょー

わが社の人手不足は深刻だ!
じんじ、なんとかするんだ!


じんじじんじ

了解しました、しゃちょー!

これからくる人手不足の原因

まず経営者として考えなければならない事は

「なぜ人手不足が起こるのか」

この原因を考え、それに対する対策を立て、解決していかなればなりません。

少子高齢化による人口減少、それに伴う労働者人口の減少

その原因としてまず挙げられるものが、少子高齢化による人口減少、それに伴う労働者人口の減少です。

日本の人口は平成20年をピークに、平成23年からは毎年減少を続けています。

総務省発表の人口推計にでは平成30年10月の日本の総人口は1億2644万3000人と8年連続で減少

減少幅、減少率ともに過去最大となりました。

人口減少の現状
出典:総務省HP  人口減少の現状

また、生産年齢人口(15~64歳)の割合は59.7%。約7545万人となります。

こちらも過去最低の数字となり、働き手不足がより明確になった形です。

これに対し、65歳以上の人口割合は28.1%。約3558万人と過去最高となっています。

一方15歳未満の人口は12.2%。約1542万人と過去最低になっており、将来的にも労働力人口の減少は続いていく事が考えられます。

⇒勘ちがいしやすい?労働力人口と生産年齢人口の違い

労働条件などの雇用のミスマッチ


これらの数字だけを見ると、労働人口の減少により日本全体で人手不足が進んでいる、と考える方も多いでしょう。

ですが、一部の業種では人材の余剰が見られる現状もあります。

厚生労働省が2019年3月に発表した正社員の有効求人倍率は、集計を始めた2005年度以降で最も高い1.13倍となっています。

一般職紹介状況について
出典:厚生労働省HP 一般職紹介状況について

ところが、その内訳を見てみると、「建設工事に関わる職業」の有効求人倍率は10.67倍ですが、「一般事務」では0.38倍と約28倍の開きがあります。

この数字が表しているのは、人材を求める企業と仕事を求める労働者の「労働条件等の雇用のミスマッチ」が存在しているという事です。

新卒の求職者であれば
・初任給
・勤務時間
・転勤の有無
・職種(ブルーカラーかホワイトカラーかなど)

などの、募集要項や面接時の対話などで分かる情報が多いでしょう。

ですが、、求職者は新卒だけでなはく、転職で新しい仕事を探す人も多くいます。

では、転職で仕事を探す人たちは、なぜ全職を辞めたのでしょうか?

勿論、家庭の事情や病気等でやむを得なく退職をした人もいるでしょう。

その様な特殊なケースを除く退職の理由としては次の理由が考えられます。

待遇への不満

・長時間労働が当たり前になっている
・休日が少ない
・サービス残業を当然の様に要求される

一昔前は、会社の利益になる為、長時間の勤務やサービス残業、休日出勤などが当然とされる社会の風潮がありました。

ですが、現在はそれらが社会問題とされ、世間からも厳しい目で見られています。

その様な中で、こんな待遇の会社で長く勤めようと思う人はいません。

いくら魅力的な仕事で周囲の人間関係が良好でも、休養が足りなければ体調や精神のバランスを崩してしまうリスクがあります。

対策としては
・短時間勤務や業務の外注化などで、長時間労働を分散させる仕組みを考える
・休日をしっかり取れる環境を整える
・残業を出来るだけ減らし、残業が必要な場合はしっかりと残業代を支給する

などでしょう。

これらの問題を抱える中小企業がこの様な対策をすぐに実行するのは経営上の難しさもあります。

ですが、従業員が長く働ける環境を整備するには、労働時間や休日のバランス、様々な働き方などを検討し、待遇を改善、皆が無理なく勤務できる環境の整備が必要となります。

やりがいの欠落

勤務時間や残業などに対する社会の考え方が変化しているのと同様に、従業員が会社に求めるものにも変化が生まれています。例えば、
・自分が成長する機会があるのか
・キャリアアップの仕組みは用意されているのか
・会社の描く将来像に共感出来るのか

などです。

これらのミスマッチは、従業員の「やる気の欠落」の原因となり、退職のきっかけにもなり得ます。

従業員にやりがいを感じさせるためにも、
・成長する為の研修の機会
・キャリアアップの手順や、それによる昇給などの明示
・会社の目指す将来像の明文化

などを、従業員にしっかりと伝え、共有する必要があります。

人間関係のストレス


小さな部署ごとでの人間関係、上司との関係性、性別による人間関係のストレス・・・
毎日接する職場の人間関係から生まれるストレスは転職や退職を考える上で大きな原因となるものです。

もちろん、その個人の性格やコミュニケーション能力などによる部分も小さくはないでしょう。

ですが、これらの理由での退職のリスクを減らすために、企業はその対策を立てる必要があります。

人間関係の不和はコミュニケーションの不足から生じる事が多いため、企業としては、休憩時間などに業務を気にせずに、従業員同士、上司と部下などが気兼ねなく会話の出来るスペース、環境作りなどはとても有効です。

例えば、オフィスの声が届かない、業務が見えない場所に、お菓子やドリンクなどを備えた休憩場所を作ってみるのはどうでしょうか?

待遇への不満ややりがいの欠落、人間関係のストレスなどは、あくまで退職の理由となる主な例です。

会社としては、社員の不満がどのようなものなか、的確に把握していなければ改善策を立てる事も出来ません。

しかし、社員に不満を尋ねても正直に答えてくれないケースの方が多いでしょう。その後の会社の評価や人間関係を考えれば、むしろそれが自然です。

その場合、退職者に退職理由のアンケートを取る、という方法であれば、会社や上司に気兼ねすることなく、本当の不満を応えてくれる事が多くなるかもしれません。

こういった点を改善する事で人材不足の改善や、離職率の低下などを防げるのではないでしょうか?

現在離職率と人手不足が深刻な業界

現在、離職率や人手不足が深刻と言われる業界として、
・宿泊業
・飲食サービス業
・生活関連サービス業
・娯楽業

などが挙げられます。

これらの業界の離職率や人手不足の原因として一番大きなものは「待遇への不満」でしょう。

人々の生活時間をカバーできるサービスが中心の為、労働時間が長かったり残業が多い。

また、「安く提供する事」が主となってしまった業界では給与も低くなり、離職率が上がる原因となっています。

そして、これから人手不足が起こりうる業界としては、
・社会福祉、介護事業
・医療業界
・建設業界
・運輸業界
・郵便業界

などが挙げられます。

これらの業界・サービスはこれから少子高齢化が進むにつれて需要と供給が逆転、その差が広がっていったり、体力的な面などから人材不足が予想されます。

労働力人口に限りがありそれが減少していく以上、企業が従業員数を維持・増加させようとすれば、人材不足で倒産する企業も増え企業数は減少していきます。

海外に市場を求められる大企業はともかく、中小企業については人手不足の原因を知り、対策を打つことが求められるでしょう。

しゃちょーしゃちょー

人手が足りない理由がこんなにもあったのか
社会全体で労働者が足りてないというのもあるし、それぞれの会社で個別の理由があって人手が足りないということもあるんだな

じんじじんじ

そうなんです、しゃちょー
少子高齢化など社会問題になっている点については私たちでできることは少ないかもしれません
でも、逆を言えば雇用のミスマッチなど個別の問題は企業努力でなんとかなるかもしれませんよ

これからくる人手不足への対策


これから労働力人口の減少を続ける時代の中で、中小企業はどのような対策を取らなければならないのでしょうか?

また、取るべき対策はにどのようなものがあるでしょうか?

福利厚生の充実

在職者や求職者へのアピールで効果的なのはやはり賃金でしょう。

しかし、賃金を上げる事は会社への負担も大きく、中小企業にとってはあまり現実的な対策ではありません。

それに対し、福利厚生は比較的見直しがしやすい分野となります。

内容によってはコストもかかりますが、給与を上げる事に比べれば会社への負担も少なくなります。

インターネットでの求人も多くなっている現在では、福利厚生の充実は自社のホームページなどに掲載する事で求職者へのアピールにも繋がります。

福利厚生の充実は、離職の抑止に加え、人材確保の面でも効果を期待が出来る対策となります。

多様なワークスタイルへの見直し

また、長時間の労働力が必要な職場では、労働時間も離職の原因や求職者が敬遠する原因になり得ます。

業務内容の見直しや適正化、残業時間の削減、ワークライフバランスの見直しなど、検討出来る点は多く見つかるはずです。

最近では、働く女性の増加や、定年後も働く高齢者も増加してきています。

これらの労働力を上手く利用し、それぞれが働きやすい勤務時間を調整する事で人手不足の解消に成功した事例もあります。

また、どうしても人材不足で業務が回らない、在職者にしわ寄せがいってしまうのであれば、外注により、業務の外部化を図る手段もあります。

例えば、アポイントメント営業で人手が足りない場合、その業務を外部企業または個人に委託する方法もあります。

外部への依頼は外注費用としてコストがかかりますが、人員の募集、教育に関わるコストを省くことが可能です。

また、それぞれの従業員が自分の業務に集中できるようになります。

ただし、社内に業務のノウハウが蓄積されない為、将来的には人材不足を解消し、自社で行なえるよう業務を進めていく事が理想でしょう。

海外からの人材の利用


また、これから人材不足が見込まれる業界での業務などでは、国内で足りなくなる労働力人口の代替として、海外からの人材も積極的に採用していく必要が出て来ます。

先程、離職率や人手不足が深刻と言われる業界として挙げた
・宿泊業
・飲食サービス業
・生活関連サービス業
・娯楽業

などでは、すでに多くの外国人労働者の受け入れをしています。

ホテルやレストラン、コンビニなど具体例を挙げてみれば実感出来るのではないでしょうか。

そして、これから人手不足が起こりうる業界として挙げた、
・社会福祉、介護事業
・医療業界
・建設業界
・運輸業界
・郵便業界

などの海外からの人材の受け入れに関しては、国も将来を見据え、推進をしています。

特に福祉、介護業界での海外からの人材受け入れに関しては、必要性は勿論、実例などもレテビや経済誌で取り上げられる事も多くなり、実際に検討している企業、経営者も増えてきています。

外国人雇用の今後の見通し
出典:パーソル研究所

海外からの人材受け入れに関しては様々なルートがあります。

外国人技能実習生を利用する場合は、国内の外国人技能実習制度・管理団体を通すことにより、

・人材の能力の把握

・身元や在留資格の確認

・日本での生活の確認

など、企業では管理の難しい事柄も、専門の職員が対応する事で人事担当者の負担の軽減が可能です。

海外からの人材に関する情報も得られるので、積極的に利用してみましょう。

とはいえ、実際に受け入れる際には環境整備等、国内の人事採用の様に「では翌日から」などといった一朝一夕に出来るものではありません。

今からしっかりと対策を検討しておく必要があります。

じんじじんじ

福利厚生の充実!わが社もこの点を充実させるべきです
あと残業時間の見直しも必要そうですね
これだけでも求職者からブラック企業なんて見られなくなりますよ!

しゃちょーしゃちょー

バッカモーン!
わが社は今でも十分クリーンなホワイト企業だ
仕事がもらえるだけでありがたく思うもんだぞ?

じんじじんじ

しかし、しゃちょー
それでは今の若い人はついてきませんよ
それに社員の生活を真剣に考えている会社の方が社員の能率もアップすると思いませんか?

しゃちょーしゃちょー

う、う~ん
そうは言っても急に会社の体制を変えるのは無理ってもんだぞ

じんじじんじ

それは少しずつ変化させていけば良いと思いますよ
あと、外国人人材に手伝ってもらうという手もありそうですね

『これからくる人手不足』の「原因」と「対策」のまとめ

これから日本国内の労働力人口が減少していく事は、人口の年齢割合から見ても避ける事の出来ない未来です。

労働力人口の減少による人手不足は中小企業や特定の業界にとっては切実な問題であり、その解消は重大な課題となります。

人手不足の対策は、その原因を理解し、解決することが重要です。

今現在人手不足に悩んでいるのであれば、従来の考え方を変えて改善に取り組むことが重要だといえるでしょう。

国内の労働者人口が減っていく事が確実となっている事から、人材の確保に於いて、海外の人材の重要度が増していく事は確実となります。

それを踏まえた上で、どの様に優秀な人材を確保していくか、その機会を得るかを調べ、実行していく事が、10年、20年先を見据えた経営の上で非常に重要になってきます。

そういった職場の環境改善を進める事が、将来にわたり優秀な人材を確保していく最善の考え方ではないでしょうか。